当センターでは、心理学実験や生理学的指標の計測(視線や瞳孔径、皮膚電気活動、筋電など)、脳の構造や機能の計測(機能的磁気共鳴画像法(fMRI)や磁気共鳴スペクトロスコピー(MRS)、近赤外線スペクトロスコピー(fNIRS)、脳波計(EEG) )を行い、下記のテーマについて研究を行っています。研究の参加者は、神経発達症の診断のついている方から、定型的な発達をしている一般の方まで、幅広く対象としています(研究参加者募集のページはこちらをご覧ください)。
また、浜松医科大学精神医学講座、浜松医科大学生体機能イメージング研究室、福井大学子どものこころの発達研究センターなど他の研究機関とも共同し、脳と心のメカニズム解明のため多角的な研究を行っています。
当センターでは、ヒトの社会的認知、言語、情動、意思決定などを解明することを目的に、行動や生理指標(眼球や心拍など)の計測、および脳機能イメージング(fMRI、fNIRS、EEG、MRS)といった実験心理学的手法を用いた研究を推進しています。
コミュニケーションは、人々の日々の生活の重要な要素です。当センターでは、顔を合わせてのコミュニケーションや、オンライン環境でのコミュニケーションなど、様々な場面でのコミュニケーションを想定し、ヒトはどのようなコミュニケーションを好むのか、またどのように相手を捉えているのか、といったテーマについて研究を行っています。 そして、コミュニケーションを苦手とする自閉スペクトラム症の方々は、これらの情報・認知処理にどのような違いがあるのかについても検討しています。
言語によるコミュニケーションはヒトが持つ最大の特長のひとつです。当センターでは、他者の発話や文章を理解するときに脳の中でどのような情報処理が行われているのか、また言語と社会的認知(たとえば他者の意図や感情を推測する能力)はどのように相互に関連しているのか、といった問題に取り組んでいます。また、こうしたヒトの言語処理についての基礎研究と並行して、神経発達症と関連する言語処理上の特徴がないかを探索する研究も行っています。
私たちは日常生活で多様な状況に対して、行動を調整しています。その場にふさわしい行動をとるには、その場の状況や目的に照らし合わせてた適切な行動が何かを事前に考え判断しています。このような事前の状況判断による行動の調節は、ヒトでは高いレベルの認知が働くことによってできるようになりますが、それが何歳ぐらいでできるようになるのか?、また、どのような脳領域が関係するのかについてはまだ理解されていません。そこで、私たちの研究では、幼児期以降のお子さんを対象として、複数のルールを使ったゲーム課題をしている時の脳の働きを近赤外光を利用した装置を使って調べています。
神経発達症がある方は、その知覚・認知・記憶のされ方が定型発達の方と異なるために、活動が制限されたり、うつや不安が強くなるなど、生活の中で二次的な問題を生じることがあります。少し例をあげると、T-シャツのタグが気になって仕方ないというような感覚の調整の難しさに起因する問題や、嫌な記憶が写真のように頭に残ってしまいやすいために同じ見た目のものを避けるというような認知や記憶の特性に起因する問題などです。わたしたちは、こうした発達特性とそこから生じる二次的な問題の関連について、質問紙や心理学実験、生理学的指標の計測技術を用いて研究を行っています。
神経発達症を持つ方は、神経発達症のない人が多数を占める社会に溶け込むために、自身の発達的特性を隠したり、補ったりする社会的戦略を用いることが知られてきています。このような社会的戦略を用いることで、当事者が日々の生活をより適応的に送ることができるとする報告がある一方、社会的戦略を用いる際の精神的負担の重さから不安や抑うつ傾向が高くなる方もいることも知られています。わたしたちは、神経発達症の当事者が用いる社会的戦略のうち、どのような戦略が効果的かつ負担が少ないのかについて、質問紙や認知研究を用いて調べています。
子どもたちの個性を伸ばすために、大人はどんな準備をしてあげるべきでしょうか。その答えを、科学的に、できるだけ詳しく探究していくことが、当センターで行っている疫学調査の目的です。この目的のために、私たちは、たくさんの子どもたちを対象にして、子どもたちがいつ、どんなふうに成長するかをくわしく観察し記録します。そして、記録されたデータをもとに、成長を促進したり調節したりする要因を見つけることを目指します。
浜松母と子の出生コホート研究(HBC Study)は、一個人の神経発達学的・精神医学的表現型を、新生児期から思春期にわたって定量的かつ継続的に計測する大規模・多目的疫学研究プロジェクトです。 プロジェクト運営の主な目的は、個人ごとの神経発達軌跡から発達の特性を特定し、自閉スペクトラム症をはじめする神経発達症のなりたちの理解に寄与することにあります。 2007年に運営を開始し、1,258名の子どもの追跡を生後1か月から13回にわたり継続し、児の神経発達を繰り返し直接評価しています。現在は13~14歳の発達調査が進行中です。 今後も16~17歳、18~20歳での評価を計画しており、継続的データの質と量の充実を目指しています。
これまでの研究の知見についてはこちらをご覧ください。
研究にご参加いただいた同意の内容は、こちらに掲載しています。
HBC Studyは、アジアにおけるコホート連携(Birth Cohort Consortium of Asia, BiCCA)の活動に参加しています。
また、全国出生コホートコンソーシアム(the Japan Birth Cohort Consortium, JBiCC)の活動に参加しています。
当センターでは、バングラデシュの子どもたちの縦断的コホート研究を開始し、神経発達症と心理社会的問題の軌跡を調査しています。また、生活習慣の問題、小児期の逆境体験や、その他の環境要因が神経発達症や心理社会的問題に与える影響も評価する予定です。バングラデシュの西部に位置するチュアダンガ県アラムダンガ村の4つの組合(各村から3区ずつ)から、5〜7歳の子ども約1,200人とその両親を世帯調査にもとづいて募集します。
Our center is establishing a longitudinal cohort of Bangladeshi children to investigate the trajectories of neurodevelopmental disorders and psychosocial problems. The project will also evaluate the impact of unhealthy lifestyles, early adversities, and other environmental factors on neurodevelopmental disorders and psychosocial problems. About 1,200 children aged 5-7 years will be recruited from four unions of Chuadanga District of Bangladesh through a household survey.
研究によって得られた成果は、社会的な問題の解決のために応用される必要があります。当センターでは、主に学校現場での調査を通じて得られた研究成果をもとに、いじめや不登校などの問題解決に向けて、様々な取り組みを行っています。 また、子育て応援プログラムの実施や講演活動などを行っています。
こころの健康観察NiCoLiは、公益社団法人子どもの発達科学研究所、浜松医科大学、弘前大学が、浜松市精神保健福祉センターの協力のもと作成した、子どものメンタルヘルス(抑うつ・不安)と背景要因に関する調査システムです。 子どものこころの健康(抑うつ・不安)を定期的に観察して支援ニーズのある子どもを早期発見、早期支援体制の構築をすることによって、不登校やメンタルヘルスのさらなる悪化を予防することを目的としています。2020年の調査開始から、延べ18万人の小中学生を対象に調査を実施しています。
「ペアレント・プログラム」は、保護者が子どもの「行動」の理解の仕方を学び、肯定的なかかわり方を工夫することで、子どもの発達にプラスの効果をもたらすことを目的とした子育ての応援プログラムです。 全6回のプログラムでは、「現状把握表」のワークを通して、保護者どうしがペアを組んで話し合ったり、同じような悩みや体験を共有したりしながら、楽しく子育てをする自信をつけていきます。 発達障害やその傾向のある子どもをもつ保護者だけでなく、さまざまな悩みをもつ多くの保護者に有効とされていて、保護者の抑うつ気分の改善や養育スタイルの改善の効果が確認されています。 静岡県内の各自治体や子育て支援機関と協力して、ペアレント・プログラムの普及と実施者の養成研修を進めています。
浜松医科大学子どものこころの発達研究センターでは、浜松市発達相談支援センター「ルピロ」と協力して、毎年、世界自閉症啓発デー(4月2日)記念イベントとして、講演会を開催しています。過去5年間のテーマは下記の通りです。
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