子どものこと、こころのこと、発達のことなど、生活に役立ちそうな知識や研究成果を分かりやすく解説します。
近年,子どもの発達に対する関心が非常に高まっています。
身長や体重の発達,筋力や運動能力の発達はもちろんのこと,考えたり判断したり集中したりといった認知機能の発達,こころの発達,さらには脳そのものの発達について,世界中で活発に研究が行われています。なぜ,子どもの発達研究が必要なのでしょうか?
理由1 子どもの発達について,科学的にわかっていないことがたくさんあります。「三つ子の魂百まで」「寝る子は育つ」「小さく生んで大きく育てる」など,分かった気になれる言い伝えはたくさんあるのですが,科学的な根拠に乏しい,もしくは間違いも含まれています。近年では,ゲームとYouTubeならどっちを許すべきか,何時間なら大丈夫か,といった子育ての悩みにも答えが必要です。あらためて,子どもの発達に科学的に向き合うべきだと,世界の多くの専門家たちが認識し始めています。
理由2 子育て政策を見直すべきだという機運が高まっています。日本では,過去40年間,出生時体重(生まれたときの赤ちゃんの体重)がみるみる低下し,先進国ではもっとも低い値になってしまいました。ところが,出生時体重が小さいほど幼児期の神経発達がゆっくりになり,将来の肥満のリスクが高くなることが指摘されています。 「小さく生んで大きく育てる」言い伝えに沿った結果が,ひょっとすると望ましくない結果を招くかもしれない,そんな疑念も生じています。子育て政策を見直すためには,経験則ではなく,信頼に足るデータに頼るべきだと考えたのは,英国など一部の西欧の諸国です。
わたしたちも同様に考えています。そこで,妊娠中のお母さまたちに参加いただき,お母さまたちの環境・ライフスタイル・体質などを調査したうえで,生まれてきたお子さんたちの発達を10年以上にわたって追いかけてきました(浜松母と子の出生コホート研究: HBC Study) 。ここでいう発達とは,身長や体重にとどまらず,神経発達(運動機能や言語機能など),気質,認知機能,日常生活機能,さらには家庭や学校での生活の実態も含みます。
浜松母と子の出生コホート研究(HBC Study)は2007年に運営を開始し,これまでに1258名のお子さんに参加いただきました。募集はすでに終了していますが,参加いただいたお子さんの追跡はこれからも続いていきます。
※日頃よりHBC Studyに参加いただいている皆さま,ご支援くださる皆さまに感謝申し上げます。
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